著者:一穂 ミチ
2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。劇場版アニメ化もされ話題の『イエスかノーか半分か』など著作多数。『スモールワールズ』(講談社)が、第165回直木賞候補、第12回山田風太郎賞候補となり注目を集める。同作収録の短編「ピクニック」は第74回日本推理作家協会賞短編部門候補となる。
あらすじ
「できること、やりたいこと」何もない。
大阪の一流企業の受付嬢で契約社員として働く柳生美雨は、29歳になると同時に「退職まであと1年」のタイムリミットを迎えた。
その記念すべき誕生日の日、雨の夜に出会ったのは売れないお笑い芸人の矢沢亨。
掴みどころのない亨、その相方の弓彦、そして仲間の芸人たちとの交流を通して退屈だった美雨の人生は、雨上がりの世界のように輝き始める。
美雨と亨、弓彦の3人はへんてこな恋と友情を育てながら、季節は巡り、やがてひとつの嵐が訪れ、、、。
感想
登場人物の会話がリズミカルに繰り広げられており、クスッと笑うことができる。そして、この物語に出てくる人物はみんなどこか不器用で、その不器用さが非常に愛くるしく感じる。
とにかく綺麗な表現が多く、ずっと穏やかで柔らかい空気に包まれているような感じがし、心地よい読後感を得ることができる。
表紙の真っ赤な傘が目に止まり購入したが、読み進めていくうちにタイトルと表紙の意味がわかり、著者である一穂ミチさんの言葉のセレクトに胸を掴まれた。
いつかドラマや映画など映像化される予感がする内容だった。